2002年、北海道警察で現職の警察官が覚醒剤の使用・所持・密売、さらには拳銃の不正所持に関与していたという衝撃的な事件が発覚しました。俗に「稲葉事件」と呼ばれています。
この事件は、警察という正義の象徴の内部で起きた不祥事として、社会に大きな波紋を広げるものでした。
そして2016年、この事件をモチーフにした映画『日本で一番悪い奴ら』が公開されました。
主演は綾野剛さん、監督は白石和彌さん。映画は、警察組織の中で成果主義に追われ、裏社会と癒着しながら堕ちていく警察官の姿を描いています 。
この映画と事件を通して、「内部不正はなぜ起こるのか」「どうすれば防げるのか」という問題が見えてきます。
稲葉事件の概要
稲葉は、北海道警察の生活安全特別捜査隊に所属していました。
暴力団対策や銃器摘発で成果を上げていたエースの警察官でしたが、2002年、情報提供者(通称「S」)の告発により、覚醒剤の使用と所持が発覚しました。
さらに自宅やアジトからは大量の覚醒剤とロシア製拳銃が押収され、密売・密輸の疑いが濃厚となりました。
稲葉は、上司との軋轢や成果へのプレッシャーからストレスを抱え、2000年頃から覚醒剤に手を出していたと証言しています。事件は、警察組織の隠蔽体質やチェック機能の欠如を浮き彫りにしました。
映画『日本で一番悪い奴ら』とは
映画『日本で一番悪い奴ら』は、稲葉事件をベースにしたフィクション作品ですが、その内容は非常にリアルです。
綾野剛演じる主人公・諸星要一は、正義感を持ちながらも成果を求められ、次第に裏社会と癒着していきます。情報提供者「S」との関係、拳銃や覚醒剤の密売、そして警察組織の隠蔽、すべてが実話に基づいているようです。
映画は、警察内部の腐敗だけでなく、「成果主義が人を狂わせる」というテーマを強く打ち出しています。
諸星は「正義のため」と信じて行動していましたが、いつしかその正義は歪み、取り返しのつかない道へと進んでいく様子がリアルに描かれています。
内部不正はなぜ起こるのか
稲葉事件や映画から見えてくるのは、内部不正が個人の問題ではなく、組織の構造に根ざした問題だということです。

これらの要素が絡み合うことで、不正は見過ごされ、やがて組織全体が揺らぐほどの大事件へと発展する可能性があるのです。
内部通報制度の必要性
こうした不正を防ぐためには、「声を上げられる環境」が不可欠です。そのために有効なのが、内部通報制度、特に「社外通報窓口」の設置です。
ハラスメントのみの通報窓口ではなく、内部不正も併せて対応できる社外通報窓口の設置が必要です。
社内の窓口では、通報者が「報復されるのでは」「握りつぶされるかも」と不安を感じることが多いでしょう。社外窓口であれば、第三者機関が通報を受け付け、匿名性や秘密保持が担保されます。これにより、通報者は安心して不正を報告できるようになります。

これらを通じて、「声を上げることが評価される」文化を育てることが、健全な組織づくりにつながります。
日本公益通報サービス株式会社は内部不正も対応しています。
まとめ──稲葉の現在
「稲葉事件」は、警察という正義の象徴が抱える闇を暴いた事件でした。
刑期を終えた稲葉は現在、探偵事務所を開設、薬物やアルコールの依存患者家族を支援する会の会長を務める他、数々のYouTubeチャンネルに顔を出し、当時の様子、捕まった時の心境などを述べています。
内部不正は、どんな組織でも起こり得ます。
そして、それを防ぐ鍵は、声を上げられる空気と、それを受け止める仕組みにあります。
社外通報窓口は、その第一歩です。誰もが安心して働ける社会をつくるために、今こそ社外通報窓口の設置が求められています。
(参考:稲葉事件 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E8%91%89%E4%BA%8B%E4%BB%B6 WONDIA– 稲葉事件の真相https://wondia.net/inabajiken#google_vignette、映画『日本で一番悪い奴ら』 – Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki 映画.com 日本で一番悪い奴ら https://eiga.com/movie/83740/)