第二次世界大戦後、シベリアの抑留で強制労働を強いられていた者たちが、帰国した際に伝えた言葉が「ノルマ」だと言われています。個人や集団に課される標準作業量のことで、一定時間内に否応なく達成することが求められるというものでした。こうした背景もあり、ノルマという言葉は常にネガティブに捉えがちです。近年、従業員のメンタルヘルスの関係やパワハラに繋がるとの意見から、ノルマを廃止しようとする流れも出てきました。しかし、会社を存続させていくには、なくてはならないという考えもあり賛否両論が飛び交っています。
ノルマのメリット・デメリット
・メリット
企業は利益を確保できなければ存続することはできません。ノルマとは、会社運営の点から、利益を計上するために必要な売上を求めるものです。
ノルマの設定は、組織の方向性や従業員のやるべきことを示す役割を担います。具体的な目標として数字が示されているため、従業員は自分自身の達成すべきゴールと役割を明確に把握することができます。これらは従業員のモチベーションアップと企業の業績向上に大きく貢献するものです。
さらに、従業員にとってノルマの達成感は何事にも代えられない喜びとなります。ノルマ達成の過程を経験することや実績を積み重ねることで、スキルの向上が望めます。キャリアアップにも繋がるため、収入にも直結していきます。
・デメリット
ビジネスにおいてノルマとは、強制される業務量であり義務的といったニュアンスが含まれています。企業としては一時的な利益が確保されますが、厳しすぎるノルマは従業員のストレスや不正などモラルの低下に繋がりやすく効率の低下を生じる場合があります。

ノルマとパワハラとの関係性
企業がノルマを掲げること自体は問題を生じません。しかし、達成が不可能と思われるノルマの設定は、パワハラに該当します。過剰なノルマは、上司が部下に対してペナルティを課す状況にもなりかねません。メンタル的にもストレスがかかるノルマですが、どういった状況がパワハラに結びつくのでしょうか。
ノルマが達成せず、自爆営業に走らされるケースが存在します。自爆営業とは、従業員が自己負担で自社の商品やサービスを購入してノルマの達成を行う行為です。自腹契約とも言われるものです。ある企業では、従業員一人当たりにハガキの購入枚数がノルマとして割り当てられており、未達成の場合には差額を自腹で対応することが慣習とされていました。従業員により大量に購入されたハガキは、金券ショップなどに持ち込まれ転売されていたとのことです。金券ショップでは定価よりも安い価格で買い取られることから、従業員にとっての金銭的負担は大きなものでした。また、ノルマ未達成の従業員に対しては、指導と称して「お立ち台」の上で謝罪をさせるというパワハラにまで発展しました。
自爆営業は線引きが非常に難しい問題のひとつですが、政府は売上ノルマを達成するための自爆営業がパワハラに繋がるとして規制強化に乗り出しています。
ノルマが達成できなかったとしてペナルティを課すことは違法です。6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金に処される場合もあります。企業としても、ブランドイメージの失墜に繋がることが予測されます。
従業員のノルマ達成に向けてのポイント

企業に貢献できる人材育成のためには、従業員が自らの意志で目標となるノルマを達成できるよう導くことが必要です。
・適正なノルマへの見直し
ノルマはそれぞれの経験やスキルに応じて、現実的な設定をすることが重要です。状況に合わせた見直しにも柔軟に対応できるよう進捗状況の確認も必要です。さらにフィードバックの機会を設けることで、目標への確認とモチベーションアップに繋げます。
・自社の商品・サービスの知識を高めるための研修
ノルマ達成のためには、自社の商品やサービス内容の知識を深めておく必要があります。さらに、顧客のニーズも把握しておかなければなりません。差別化を図るためにも、他社との決定的な違いを明確にすることでアピールのポイントとします。クライアントに対してのコミュニケーション能力と傾聴力を磨くことも成功に繋がる要素です。
・モチベーション維持のための評価
達成の成果が適正に評価されるシステムも必要です。納得のいく評価は、組織への信頼度にも関わります。
従業員の成長を促すためには、能力よりやや高めの設定が最良だといわれています。
まとめ
企業は成長し続けなければ、一定の水準を保つことが困難となり、他社との競争に打ち勝つことはできません。目標となるゴールを設定することで、モチベーションの向上を図り、士気も高まります。ノルマの設定はネガティブなことばかりではありません。柔軟性を持って適正に設けることにより、従業員のプロフェッショナルとしての成長にも大きく貢献します。さらに、企業と従業員の方向性が一致することにより組織力が効果的に発揮され、更なる発展が期待できるでしょう。