公益のために通報した労働者を保護するとともに、事業者が法令の遵守を図ること等を目的とした「公益通報者保護法」は、2006年4月に施行されました。2020年には、制度の実効性を高めるため、事業者に対して必要な体制の整備を講じることが義務化されるなど改正が行われています。(2022年施行)
消費者庁では、近年の公益通報者保護制度を巡る国内外の環境の変化や、改正後の施行状況を踏まえた課題について、有識者による検討会を開催しました。2024年11月までに6回の検討会が行われており、今年度年中をめどに取りまとめを行うとしています。
「改正公益通報者保護法」を簡単に解説
2022年6月1日に、改正公益通報者保護法が施行されました。勤務先の不正を通報した従業員を保護するための法律です。それにより労働者が301人からの事業者には、通報窓口の設置など体制の整備が義務付けられました。さらに、内部通報担当者には通報者の情報を漏らしてはならないなど守秘義務が生じます。違反した場合には30万円以下の罰金が科せられます。
公益通報者として保護される範囲も拡大されています。通報日前の1年以内の退職者、役員も含まれました。
改正公益通報者保護法において、通報者は公益通報を行ったことによる不利益な扱いを受けないことが保証されています。通報を理由とした通報者への解雇は無効です。さらに、通報を理由とした降格、減給、退職金の不支給・減額、給与上の差別、訓告、退職の強要、雑務のみに従事させることなどは禁止されています。不利益な配置転換・出向・転籍・長期出張の命令、労働契約の終了・更新拒否、本採用・再採用の拒否なども含まれます。また、事業者は公益通報により損害を受けたとして、通報者に対して損害賠償を請求することはできません。
(参考:消費者庁解雇その他不利益な取り扱いに関するQ&A)
(参考:消費者庁https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview)
今回なぜ再び改正に向けて動いているのか
消費者庁において、公益通報者保護制度検討会が開催され、改正に向けて動き出しています。公益通報者保護法は2020年に改正され、2022年に「改正公益通報者保護法」として施行されています。しかし、その後もさまざまな企業や自治体での不祥事が相次いでいるのが現状です
兵庫県では、公益通報者保護法で禁じられている「通報者探し」が行われたのではないかと指摘され、体制の不備が大きく報道されました。また、ある企業では公益通報を行った通報者を畑違いの部署へ配置転換するなど、不当な扱いではないかと疑われる例も報告されています。そのため、さらなる改正に向けての議論が必要となりました。
検討会では、通報者を特定しようとする行為や不利益な対応を行った場合の罰則の導入も検討しています。しかし、罰則に関しては慎重な姿勢もあることから、今後、さらなる議論が行われる予定です。
公益通報者保護制度検討会 第1回~第3回までの中間論点整理
消費者庁は、改正に向けた検討会において取り上げられた課題を、2024年9月2日に中間論点整理として公表しました。
●通報主体や保護される者の範囲拡大
2020年の改正で、退職後1年の退職者と役員が追加されましたが、退職後1年以内の者と1年超の者を区別する合理的な理由はなく、海外法制も参考に、退職後の期間制限を撤廃すべきとの意見が出ています。また、公益通報との関係においても保護される通報者の範囲にフリーランスと下請事業者も追加すべきとの意見もありました。その他として、家族や同僚・代理人も保護対象にすべきであり、複数の共同通報者によって通報要件を満たす場合も全員が保護の対象となるよう法や指針で明文化することが必要などの意見もありました。
●通報対象事実の範囲の見直し
公益通報の対象となる法律を列挙する現在のポジティブリスト方式をやめて、より分かりやすい制度とするため、通報対象とならない法律は何かということを明記するネガティブリスト方式を採用すべきとの意見がありました。
●行政機関に対する公益通報の保護要件
行政機関に対する公益通報について、メールアドレスなど継続的に連絡が取れる連絡先が記載されている場合や弁護士である代理人を選任した場合には、本人の氏名がなくても保護の対象にすべきとする保護要件の緩和を求める意見がありました。
●体制整備義務の対象となる事業者の範囲拡大
2023年の消費者庁「民間事業者等における内部通報制度の実態調査」において、従業員300人以下の事業者のうち内部通報制度を導入していない事業者の半数近くが「努力義務にとどまるから」との理由をあげています。こうした状況を踏まえて体制整備義務の対象となる事業者の範囲を、現在の常時使用する従業員数300人超の事業者から100人超にしてはどうかとの提案がありました。
(参考:消費者庁 公益通報者保護制度検討会 中間論点整理https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/meeting_materials/review_meeting_004/assets/consumer_partnerships_cms205_240906_01.pdf)
(参考:消費者庁 令和5年度民間企業等における内部通報制度の実態調査https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/research/assets/research_240418_0002.pdf)
外部委託での通報窓口設置のすすめ
消費者庁において2023年11月、15歳から79歳の企業に勤める1万人を対象に、勤務先での内部通報制度に認知度や体制の整備に関するアンケートを実施しました。その取りまとめが2024年2月に「就業者1万人アンケート調査結果」として公表されています。
それによると、勤務先で重大な法令違反を知った場合、全体(1万人)の約4割が、「たぶん相談・通報しない」「絶対相談・通報しない」との回答を占める結果となりました。また、「絶対相談・通報しない」と答えた人(1,089人)の約5割が理由として「誰に通報したらよいのか分からないから」をあげています。
通報のフローが分からないと混乱が生じる原因となります。また、制度の仕組み自体が社内で周知されていない可能性もあり、公益通報者保護法についての理解を深めてもらうことが必要です。
通報窓口がすでに社内に設置されている場合でも、第三者機関である外部に窓口を委託する方法が有効とされています。勤務先には通報しづらいが、外部なら敷居が低く通報しやすいというメリットがあります。
外部委託の通報窓口では、企業内の事情に左右されず、客観性があり公平性の高い判断が期待できます。通報者の安心と安全を第一に考え、通報内容の聞き取りプロセスには細心の注意が払われます。第三者機関と通報者との間には面識がないため、匿名性とプライバシーが確保され、情報漏洩対策へのノウハウも整えられています。また、誰かを陥れようとする悪意のある通報であっても中立な立場から検証し、公正な判断が可能となります。
第三者機関である外部委託の通報窓口なら、体制の整備に難しいノウハウを得る必要もなく、人材の確保・育成に時間と費用を費やす心配もありません。
さらに、セミナーや研修において公益通報者保護法についての従業員への周知と理解向上のお手伝いもいたします。制度を正しく機能させることは、企業とそこで働く従業員を守ることにもつながります。
(参考:令和5年度 消費者庁 各種実態調査結果「内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/research/assets/research_240229_0002.pdf)
まとめ
今回の検討会では、実効性向上のため体制整備義務の対象となる事業者の範囲を、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者にも拡大すべきとの意見も出ています。近い将来、範囲が広がることも大いに予測されます。すでに通報窓口が設置されている企業においても、外部の専門家へ委託するなど、運用方法について改めて検討する必要が出てくるかもしれません。公益通報者保護法は企業の不正行為による被害拡大を防ぎ、社会全体の安心安全につながり利益をもたらします。検討会では、さらなる改正に向けて議論が続けられる予定です。
パワハラ防止法・改正公益通報者保護法対策の窓口整備はお任せください。
社外通報窓口の必要性
企業内の不正行為を発見しても身近に相談できる上司や同僚がいなかったり、相談機関が機能していないとき、不正が見過ごされてしまいます。
内部不正だけでなく、ハラスメントの場合も然りです。ハラスメントの被害者はとても傷つきセンシティブな精神状態になっています。セクシャルハラスメントの被害者が女性の場合、男性の上司や社内窓口担当者へ話をすることを躊躇し泣き寝入りする可能性もあります。さらに、通報対象者からの報復の懸念があるため、上司、社内の監査、人事などへの相談も難しい状況です。
こうした複雑な状況に立ち向かうために、「社外通報窓口」(ハラスメント相談窓口、循環取引など社内不正相談窓口)の設置が必要です。社外通報窓口は、組織内の従業員がいつでも安心して相談できる独立した窓口です。
外部通報窓口であれば、匿名性が保たれます。内部通報窓口で匿名を希望したとしても声や話し方で自分だとわかってしまうのではないかと不安に思う通報者も多数いらっしゃいます。
外部に設置された相談窓口は中立的な立場から問題の解決を支援し、通報者を守ります。組織全体が不正行為の防止に向けて協力し、個々の従業員の意識改革を行うことが必要です。
法律や規制に合わせて不正行為の予防意識を高めるための努力が求められます。不正行為のないリスクカルチャーを築くことは、信頼性を高め、生産性を向上させる大きな成果をもたらします。
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◆日本公益通報サービス株式会社について
本社: 〒231-0023
神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9階
代表者: 代表取締役社長 小塚 直志
設立: 2023 年 3月
資本金: 1000万円
事業内容: 当社では、企業危機管理、働きやすい職場づくりなど、長期的な健康経営に取り組む事業者様をさまざまな形でサポートいたします。
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・専門家(弁護士、社会保険労務士、公認不正検査士、産業カウンセラー、心理カウンセラー)によるアドバイス
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