盗撮は犯罪です。「ほんの出来心で」という理由は全く通用しません。覗き見や隠し撮りは、どこにでも起こり得る卑劣な行為のひとつです。
社内での盗撮事件は、発覚すると大々的にマスコミにより報道されることになります。企業としては大きなブランドイメージの失墜に繋がりかねません。従業員から盗撮の報告を受けた場合、どのような対処を講じればよいのでしょうか。また、未然に防ぐための予防策とは、どういったものなのでしょうか。
盗撮して問われる「撮影罪」とは?
盗撮とは、対象者への許可を得ずに姿などを撮影する行為のことを示します。社内の更衣室やトイレなどにカメラを隠して設置し、着替えの様子などを撮影することは社内不正にも該当します。これらの行為は今後、「撮影罪」という新たな法律で刑事責任を問われる可能性があります。
盗撮は、それぞれの都道府県の迷惑防止条例により処罰が行われてきました。しかし、地域によって取り締まりの範囲にバラつきがあり、あいまいな点も見られるため混乱を生じていました。例えば、2012年に飛行機の中で客室乗務員のスカートの中を盗撮したとされる男性が逮捕されましたが、保釈され不起訴処分となっています。高速で移動する上空での犯行は、どの都道府県で行われたものか確実に断定できないため、条例の適用が難しいという理由からです。
このような状況を重く受け、各都道府県の条例で取り締まりが行なわれていた盗撮を、全国一律で処罰できるようになりました。2023年7月13日から施行された「撮影罪」は、これまでよりも厳しく盗撮を取り締まれる法律です。対象となる盗撮とは、裸や下着姿となりユニフォームや水着は含まれません。ただし、「撮影罪」に該当しなくとも都道府県の迷惑防止条例では処罰の対象になることもあります。
【撮影罪は、「3年以下の拘禁刑、または300万以下の罰金」が科せられます。拘禁刑とは懲役刑と禁錮刑が一本化されたもので、2025年6月1日から施行されます。それまでの期間は撮影罪の場合、拘禁刑は懲役刑として罰せられます。】
最近の盗撮事件とは?どういったことが起こっている?

♦大手個別塾の教室長が盗撮で逮捕
大手学習塾の教室責任者の男性が、今年の1月に女性を盗撮したとして逮捕されました。この責任者は、塾が入るビルの女子トイレにスマートフォンを設置し、遠隔で撮影をしていました。自身のスマートフォンを換気扇に隠し、職場のパソコンを繋いでの犯行には驚きを隠せません。責任者は、事件が発覚した翌月に懲戒解雇されています。
大手学習塾は今回の教育現場での盗撮事件について、謝罪とコメントを発表しています。それによると被害者への二次被害の防止を第一に考え、警察の捜査にも全面協力していたため、これまで公表を控えていたと述べています。
♦有名ビーズソファ店舗内での盗撮事件
“ストレスのない社会を実現する”を理念に掲げた企業において重大な違法行為が発生しました。
ビーズソファで有名な一店舗で、店長がアルバイト従業員を数十回にもわたり盗撮していたというものです。この店長は、勤務先店舗内のバックヤードで自身のスマートフォンを使用し、着替えの様子を盗撮したとして去年の11月末に逮捕され、即懲戒解雇となりました。
この盗撮事件が表沙汰になった背景には、あるインフルエンサーの告発がきっかけになったと言われています。なぜならば、告発の翌日になり、企業のトップがSNSにて事件の説明と謝罪を述べるという経緯があったためです。インフルエンサーの投稿には、被害者の許可を取ったうえで、店長がスマートフォンを設置・回収している映像がアップされていたということです。
企業側は今回の事件をすぐに公にしなかった理由として、被害者保護のために、あえて公表はしない方針だったと回答しています。
職場で盗撮の報告があった場合は?
従業員から盗撮の報告を受けた場合、企業としてはどのような対処を講じればよいのでしょうか。
盗撮は、発覚すると企業名なども報道されることになり、大きなイメージダウンに繋がります。盗撮行為を目撃またはカメラ等の設置を発見した場合には、直ちに社内のコンプライアンス担当など信頼のおける部署に届けるよう従業員にも周知しておきましょう。緊急な場合は、その場で警察への通報も視野に入れるべきでしょう。きちんと被害を届ける姿勢も抑止力となります。企業側で判断に困るようなことがあれば、セキュリティ関連業者など専門家への依頼も必要となるかもしれません。
盗撮に使用されたとするカメラやスマートフォンなどは、電源を落とし触れないように対処します。犯人の指紋が付いている可能性があるからです。
被害者のメンタルケアにおいても早急な対応が望ましいとされます。加害者への処罰も適切に行い、一連の経緯の説明と謝罪、発覚後の対応も速やかに行う必要もあります。そのためには、常にコンプライアンスに対する意識を高めておくことが不可欠です。また、社内の整理整頓に努め、カメラ等の設置する場所を与えないようにすることが基本となります。
たとえ何も写ってなくても盗撮目的にカメラを設置した場合、撮影罪の未遂として処罰の対象になります。
職場での盗撮を未然に防ぐためには?

男女共用の更衣スペースやトイレなどは、最も盗撮が発生する場所だと報告されています。今回のビーズソファ店舗のバックヤードも共用の更衣室として使用されていたため、加害者がスマートフォンを設置しやすい環境にありました。まずは職場環境を見直し、制服に着替える必要のある部署においては、男女別にスペースを設けることがリスクを回避する手段となります。
盗撮は、企業の情報漏洩の危険も含みます。セキュリティの強化を図り、入り口に防犯カメラの設置と専門家との連携もはかりましょう。不特定多数の出入りができないよう工夫することは、犯罪を未然に防ぐことにも繋がります。
外部委託による内部通報窓口のメリット
事態の早期発見に繋がるひとつとして、内部通報窓口の整備を正しく整えておくことも重要です。
外部委託の内部通報窓口は、第三者機関のため通報者との面識がありません。そのためプライバシー保護による安心感を提供することが可能です。匿名性も確保され不利益が生じる心配もありません。窓口を外部に委託しているという状況が、企業内での犯罪の抑止力にもなります。
さらに、 傾聴力の優れたオペレーターが初期対応に必要な聞き取りを適切に行うことにより、解決までの時間を短縮することができます。外部委託には弁護士や産業カウンセラーなど、特定の分野で高度に知識を身につけている専門家ともスピーディーに連携が行えるという強みもあります。
まとめ
「ほんの少し魔が差しただけ」ほとんどの盗撮の加害者が口にする言葉です。近年スマートフォン等での撮影が身近になった背景もあり、モラルの低下が否めません。加害者の罪の意識が最も薄い犯罪のひとつが盗撮だと言われています。それだけに社内でも発生しやすい犯罪です。企業としても、将来的に起こり得るリスクに対する危機感を持ち、損失を最小限に抑えるノウハウを持たなければなりません。
盗撮は犯罪です。今まで大切にしていた仕事や家族・友人までも一瞬にして失うことにもなりかねません。