2025年6月4日、「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」が参議院本会議で賛成多数で可決・成立し、6月11日に公布されました。
この改正案は、内部不正を通報したことを理由に従業員を解雇や懲戒処分にした事業者(法人)や担当者(個人)双方に刑事罰が科されるなどが盛り込まれた改正案で、
公布から1年6か月以内に施行となる予定です。
不当な配置転換についても罰則案がありましたが、今回は見送られています。
法改正のポイント
法改正のポイントは、以上4点と考えられます。
- 事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
- 公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)
- 公益通報を阻害する要因への対処
- 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
改正ポイント | |
①事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上 | ●従事者指定義務違反に違反する事業者への命令権及び刑事罰(30万円以下の罰金) ●立入検査権限虚偽報告・検査拒否などに対する刑事罰(30万円以下の罰金) ●事業者の公益通報対応体制の周知義務 |
②公益通報者の範囲拡大 | ●業務委託関係にあるフリーランスを追加 |
③公益通報を阻害する要因への対処 | ●事業者の公益通報を妨げる行為の禁止 ●公益通報者を特定することを目的とする行為の禁止(通報者の探索の禁止の明文化) |
④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化 | ●民事訴訟上の立証責任の転換 ●公益通報を理由として解雇または懲戒をした者に対する刑事罰の新設 |
①事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
常時使用する労働者が300人を超える事業者に対し、消費者庁長官による立入検査の拒否や是正命令の違反など、一定の違反行為に対して命令が可能となり、30万円以下の罰金が科されるようになりました。(法人と個人の両方を対象とする両罰規定)
報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対しても、30万円以下の罰金(両罰規定)が科されます。
②公益通報者の範囲拡大(フリーランスの追加)
事業者と業務委託関係にあるフリーランス(業務委託関係が終了して1年以内のフリーランス含む)を保護対象に追加し、公益通報を理由とする不利益な取り扱いが禁止されます。
③公益通報を阻害する要因への対処
事業者が正当な理由なく公益通報をしない旨の合意を求める行為を禁止するとともに、公益通報者の特定を目的とする行為が禁止されます。
④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
公益通報を理由として解雇または懲戒をした者に対し、以下の罰金が科されます。
●個人・・・6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
●法人・・・3000万円以下の罰金
施行後5年をめどに新法の施行の状況を勘案し、新法の規定について検討を加え、必要があると認めるときは見直しを行うことが定められました。
提出時法律案では施行後「5年」でしたが、「3年」に改める内容に修正のうえ 可決されました。
参考:公益通報者保護法の一部を改正する法律案(概要)https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_partnerships_cms205_250304_01.pdf
不当な配置転換についても罰則が必要では?
今回の改正で立証責任が事業者側に転換となりましたが、公益通報後に不当な配置転換や嫌がらせで通報者を不利益な立場に追い込んでいる実態があります。
《事例》
大手企業傘下の食品メーカー滋賀工場で製造する食品に異物混入があったと公益通報をした後、部署を異動させられ不利益な扱いを受け鬱病を発症したなどとして品質検査などの業務を長年担当してきた男性従業員が、企業に220万円の損害賠償を求め、令和6年5月大津地裁に提訴した。
訴状によると
令和3年11月 粉末状の食品を入れていたポリ袋から黒いほこりや緑色の樹脂片などを検出。
男性が所属する品質管理課が調査した結果、食品の包装に使ってはいけないポリ袋を使用していたことが判明。
令和4年6月 企業側が製品の回収など適切な対応を怠っているのではないかと疑念をもち、 滋賀県食品安全監視センターへ公益通報した。
県は工場などに立ち入り調査し再発防止を指導したが、社内で問題に関する処分は実施されなかった。
令和5年4月 別の部署へ異動となり、業務を与えられず監視カメラが自分の席に向け設置されるなどの扱いを受ける。
令和5年8月 鬱病と診断されたとしている。
令和6年5月 企業に対し220万円の損害賠償を求め、大津地裁に提訴。
企業側は「男性に対し、通報したことを理由に不当な人事異動や不利益な取り扱いを行ったことは一切ない。
また、商品の安全性については、異物は発見されたことはあったが、該当する原料はすべて廃棄処分されており、製品回収の対象にはなっていないことに加え、ポリ袋に関しても安全性の確認はとれおり、原材料の受け入れから製品の試験まで適切に行っている。製品の安全性に問題はない。」と発表しております。
提訴後に大津市内で記者会見した男性は「会社は内部通報者に対し報復しないとうたっているが、実際は報復人事が横行している。公益通報者保護法をきっちり守ってほしい」と訴えた。
また、「内部通報窓口が正常に働いて、自浄作用の働くようにまっとうな機能を示す、そういう会社に変わってほしい」と胸中も明かしました。
参考:公益通報後に「監視カメラが自分の席に…」 従業員が提訴https://www.sankei.com/article/20240513-FU5DBCCBOJKTNMMZESDTTF6GZA
参考:この異動は内部告発の報復?それとも適切な配置転換? 公益通報とはhttps://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic098.html
企業が取り組むべき課題
今回の改正だけでは決して十分とは言えません。公益通報を理由とする不当な配置転換にも罰則を科すなど、不利益な取り扱いの抑止・救済の範囲を拡大する必要があると考えます。
今後、企業が取り組むべき課題として、
●自社の内部通報制度の見直し
●通報後のフォローアップ体制の整備強化
●組織全体に周知徹底を図る
通報者の保護を徹底させるためにも、秘匿性の高い外部相談窓口の設置が有効です。
第三者の相談窓口は、中立な立場のため従業員が安心して通報することが可能な環境となり、企業にとっても実効性の高い通報制度の整備強化となります。 また通報後、通報者の意向を尊重しつつ、公正で適切な対応ができる環境を整備するとともに、通報者が不利益な扱いを受けないように配慮する体制も整備する必要があります。そして、公益通報についてセミナー等を開催し、組織全体に周知することも重要です。

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社外通報窓口の必要性
企業内の不正行為を発見しても身近に相談できる上司や同僚がいなかったり、相談機関が機能していないとき、不正が見過ごされてしまいます。
内部不正だけでなく、ハラスメントの場合も然りです。ハラスメントの被害者はとても傷つきセンシティブな精神状態になっています。セクシャルハラスメントの被害者が女性の場合、男性の上司や社内窓口担当者へ話をすることを躊躇し泣き寝入りする可能性もあります。さらに、通報対象者からの報復の懸念があるため、上司、社内の監査、人事などへの相談も難しい状況です。
こうした複雑な状況に立ち向かうために、「社外通報窓口」(ハラスメント相談窓口、循環取引など社内不正相談窓口)の設置が必要です。社外通報窓口は、組織内の従業員がいつでも安心して相談できる独立した窓口です。
外部通報窓口であれば、匿名性が保たれます。内部通報窓口で匿名を希望したとしても声や話し方で自分だとわかってしまうのではないかと不安に思う通報者も多数いらっしゃいます。
外部に設置された相談窓口は中立的な立場から問題の解決を支援し、通報者を守ります。組織全体が不正行為の防止に向けて協力し、個々の従業員の意識改革を行うことが必要です。
法律や規制に合わせて不正行為の予防意識を高めるための努力が求められます。不正行為のないリスクカルチャーを築くことは、信頼性を高め、生産性を向上させる大きな成果をもたらします。
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下記より資料のダウンロードが可能でございます。
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令和2年6月「公益通報者保護法」が一部改正、「改正公益通報者」が一部改正され、令和4年6月1日から施行されました。法改正により従業員数300人を超える事業者には、内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備が義務付けられます。具体的には、通報窓口の設置や通報者の不利益な取り扱いの禁止、通報者情報の保護などが求められます。しかしながら、社内でこれらの体制整備を実施することは、多大な負担となる場合がございます。そこで、日本公益通報サービス株式会社では、業界最安値で内部通報窓口サービスを提供いたします。
通報者が安心してご相談いただけるハラスメント相談窓口を代行させていただき、明るく働きやすい職場環境をつくるお手伝いを致します。
◆日本公益通報サービス株式会社について
本社: 〒231-0023
神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9階
代表者: 代表取締役社長 小塚 直志
設立: 2023 年 3月
資本金: 1000万円
事業内容: 当社では、企業危機管理、働きやすい職場づくりなど、長期的な健康経営に取り組む事業者様をさまざまな形でサポートいたします。
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