コラム

「課題の分離」が組織を再生する アドラー心理学から読み解く公益通報の真価

2026年4月22日
「課題の分離」が組織を再生する アドラー心理学から読み解く公益通報の真価

2026年3月31日、KDDIはビッグローブとジー・プランの架空循環取引の調査結果を公表しました。

これに先立ち1月14日に特別調査委員会を設置し、2025年12月中旬の入金遅延を機に従業員が不正を自認しました。

さらに同年2月19日の経営戦略会議で急成長への懸念が示されており、不正は遅くとも2018年8月に始まり、背景には事業中止への恐れと統治不全がありました。

KDDI子会社で起きた2,460億円もの巨額不正事件。

その中心にいたのは、社内で数々の賞賛を浴び、昇進を重ねていた「エリート社員」でした。

アドラー心理学の視点からこの事件を眺めると、日本の組織が抱える「承認欲求の罠」が鮮明に浮かび上がります。

主犯格の社員は、わずか数十万円の赤字で「事業が中止される」と怯え、不正に手を染めました。

彼は組織からの評価を失うことを何よりも恐れたのです。

アドラー心理学は他者からの評価に依存する「承認欲求」を否定します。

なぜなら、承認を求める生き方は、他者の期待を満たすための人生になり、自己の自由を奪うからです。

この事件で見落とされているのは、不正を見過ごした周囲の沈黙です。

違和感を抱きながらも、「波風を立てたくない」「上司に嫌われたくない」という思いから口を閉ざす。その沈黙が、結果として2,400億円という破滅的な被害を招きました。

ここで今、私たちに求められているのは、組織における「課題の分離」と、それを乗り越えた先にある「共通の課題」への意識です。

公益通報を躊躇させる最大の要因は、「通報したらどう思われるか」「組織を裏切ることにならないか」という対人関係の悩みです。

「これは誰の課題か?」

通報を迷うとき、私たちは「自分が真実を話すこと(自分の課題)」と「それによって相手がどう反応するか(他者の課題)」を混同しています。

  • 自分の課題: 目の前の不正を報告し、職業倫理に従って誠実に振る舞うこと。
  • 他者の課題: 通報を受けた組織が動揺するか、あるいは通報者をどう評価するか。

アドラーは「他者の課題に土足で踏み込んではならないし、自分の課題に誰一人として踏み込ませてはならない」と説きました。不正を知った人間が、組織の反応を恐れて沈黙することは、実は「他者の課題(組織の都合)」に支配されている状態です。

公益通報のメリットは、この課題の分離を断行することで、個人が組織の呪縛から解放され、「自律した個」として機能し始めることにあります。

しかし、課題を分離したままでは「自分は言った、あとは知らない」という冷笑的な態度に陥るリスクもあります。

そこで重要になるのが、アドラー心理学における発展概念、「共同の課題」への転換です。

「共同の課題」とは、本来別々の課題を持っている者同士が、協力して解決にあたるべき課題のことです。

公益通報は、単なる「密告」ではありません。それは、個人が抱えていた「不正を知ってしまった苦悩」という課題と、組織が抱える「健全な運営」という課題を、一つのテーブルに乗せる行為です。

KDDIの事例で言えば、異常な売上の伸びに対する違和感を、個人の「疑念」に留めず、組織全体の「リスク管理」という共通の課題に昇華させるべきでした。

公益通報を「共同の課題」とするメリット:

  1. 対等なパートナーシップの構築: 上司と部下という「縦の関係」ではなく、組織を良くしようとする「横の関係」の仲間として、同じ目的に向かうことができます。
  2. 責任の分散と可視化: 一人の「勇気」に依存するのではなく、通報というアクションによって、問題を組織全体の責任として正しく分散・対処することが可能になります。
  3. 信頼の再定義: アドラーは「信用(条件付きの信じる心)」ではなく「信頼(根拠なく信じること)」を重視しました。通報を受け入れる土壌がある組織は、「不都合な真実も共有できる」という深い信頼関係を築くことができます。

今回の不正事件でも、もし初期段階で「この取引はおかしい」と声を上げた人がいれば、その人は一時的に「現場の空気を読まない奴」「成功に水を差す奴」として嫌われたかもしれません。

しかし、その勇気こそが、2,400億円という損失から組織を守る唯一の盾だったのです。

公益通報は長期的に組織の生存確率を劇的に高めます。

不正が蔓延する組織は、アドラーの言う「共同体感覚(他者を仲間と見なす感覚)」が欠如しています。

主犯格が「個人的な利益のためではない」と言いながら、裏で多額の接待を受けていたのは、組織を「搾取の対象」としか見ていなかった証拠です。

通報という行為を通じて、組織の膿を出し切ることは、バラバラになった「共同体感覚」を取り戻すための外科手術です。通報者は、組織を壊す破壊者ではなく、組織が「社会という大きな共同体」の一員であり続けるための守護者なのです。

KDDI子会社の事件は、私たちに「目に見える成功(数字)」の危うさを教えました。

賞賛や表彰といった外的な報酬に縛られ、課題を分離できなくなった組織は、嘘という雪だるまを転がし続けるしかなくなります。

私たちが公益通報のメリットを最大化するためには、以下の三つのステップが必要です。

  1. 勇気を持って課題を分離すること: 周囲の目は「他者の課題」と割り切り、自らの誠実さを貫く。
  2. 問題を共通の課題にすること: 通報を「個人的な告発」から「組織の生存戦略」へとリフレーミングする。
  3. 貢献感を感じること: 承認(ほめられること)を求めるのではなく、自らの行動が社会の役に立っているという「貢献感」を自ら持つ。

アドラー心理学は、自分を変えることで世界(対人関係)を変えることができると教えます。公益通報というシステムを、単なるルールの遵守ではなく「勇気ある貢献」として再定義すること。

一人ひとりが勇気を持って真実を語るとき、組織は初めて「偽りの賞賛」から解放され、真の信頼に基づく再生へと歩み出すことができるのです。 2,460億円の損失という巨大な代償を、私たちは「対人関係の在り方」を根本から変えるための、手痛い、しかし貴重な教訓としなければなりません。

(参考:Yahooニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/da73f7871c1871b152ef89cbfa2d6c2ab63aa947・KDDI株式会社https://newsroom.kddi.com/ir-news/assets/2026/kddi_ir-1111_4400/kddi_ir-1111_4400_pdf_D.pdf)

企業内の不正行為を発見しても身近に相談できる上司や同僚がいなかったり、相談機関が機能していないとき、不正が見過ごされてしまいます。

内部不正だけでなく、ハラスメントの場合も然りです。ハラスメントの被害者はとても傷つきセンシティブな精神状態になっています。セクシャルハラスメントの被害者が女性の場合、男性の上司や社内窓口担当者へ話をすることを躊躇し泣き寝入りする可能性もあります。さらに、通報対象者からの報復の懸念があるため、上司、社内の監査、人事などへの相談も難しい状況です。

こうした複雑な状況に立ち向かうために、「社外通報窓口」(ハラスメント相談窓口、循環取引など社内不正相談窓口)の設置が必要です。社外通報窓口は、組織内の従業員がいつでも安心して相談できる独立した窓口です。

外部通報窓口であれば、匿名性が保たれます。内部通報窓口で匿名を希望したとしても声や話し方で自分だとわかってしまうのではないかと不安に思う通報者も多数いらっしゃいます。

外部に設置された相談窓口は中立的な立場から問題の解決を支援し、通報者を守ります。組織全体が不正行為の防止に向けて協力し、個々の従業員の意識改革を行うことが必要です。

法律や規制に合わせて不正行為の予防意識を高めるための努力が求められます。不正行為のないリスクカルチャーを築くことは、信頼性を高め、生産性を向上させる大きな成果をもたらします。

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令和2年6月「公益通報者保護法」が一部改正、「改正公益通報者」が一部改正され、令和4年6月1日から施行されました。法改正により従業員数300人を超える事業者には、内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備が義務付けられます。具体的には、通報窓口の設置や通報者の不利益な取り扱いの禁止、通報者情報の保護などが求められます。しかしながら、社内でこれらの体制整備を実施することは、多大な負担となる場合がございます。

そこで、日本公益通報サービス株式会社では、業界最安値で内部通報窓口サービスを提供いたします。

通報者が安心してご相談いただけるハラスメント相談窓口を代行させていただき、明るく働きやすい職場環境をつくるお手伝いを致します。

代表 :代表取締役社長 小塚直志
設立 :2023年3月
事業 :企業の内部不正やハラスメントに対する外部相談窓口の設置、専門家による調査・対応支援、セミナー・研修の実施など、包括的なリスク管理ソリューションを提供。【専門家による対応可能】業界最安値で信頼性と実績を基にクライアントの職場環境改善とリスク軽減を支援します。
URL :https://jwbs.co.jp/
本社 :神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9F

■内部不正・ハラスメント・コンプライアンス外部相談窓口サービス
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■各種セミナー・説明会の実施サービス
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■カスハラ・クレーム代行窓口
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■ハラスメント理解度チェックテスト
貴社の職場のハラスメント理解度をチェック

代表  :代表取締役社長 小塚直志
設立  :2018年3月
事業  :反社チェックやAML・KYC対策を支援する高度なリスク情報データベースを、あらゆる業界・企業に向けて展開。シンガポールのARI社との提携により、国内外500万件以上のリスク情報を網羅。【検索件数780万件突破】低コストで企業リスク管理を実現したい企業様に最適なサービスを提供します。
URL  :https://www.jcis.co.jp/
本社  :神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9F

代表  :代表理事 小塚直志
設立  :2025年9月
事業  :オンラインセミナー・研修を含む多様なサポートの提供。信頼と実績を基に、安心・安全な職場環境の実現を強力に支援します。また、企業リスク回避のための探偵調査やカスタマーハラスメント対応の相談も承ります。【会員制倶楽部】会員間の交流を深める懇親会も定期的に開催中です。
URL : https://nihonchosa.jp/
本社  :神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9F

代表  :代表理事 小塚直志
設立  :2023年5月
事業  :日本全国で発信される記事を精査・入力する独自の運用により、正確かつ深度のある調査情報を提供。検索では得られない情報を反映し、実務で活用できるツールを構築。【日本最大規模】のデータベース・インフォメーション企業として、地方新聞情報を完全に網羅。
URL   :https://jdac.co.jp/
本社  :神奈川県横浜市中区山下町2番地 産業貿易センタービル9F

◆株式会社 Webb(ウェッブ)
代表
    :CEO 兼 創業者 萩原雄一/名誉会長 兼 創業者 小塚直志
設立    :2026年1月
事業    :日本信用情報サービスの「JCIS WEB DB Ver.3」を提供。膨大なデータを効率的に活用できる仕組みを生み出し、日本最大のリスク管理体制を形づくる。【世界のトップインテリジェンス企業が認めた】膨大なデータを効率的に活用、ユーザーがより使いやすいツールやシステムを開発。
URL    :準備中
本社    :東京都港区赤坂6-9-17 赤坂メープルヒル 5F

◆日本リスク管理センター 株式会社
代表    :代表取締役 神々輝彦/社外取締役 小塚直志
設立    :2024年7月
事業    :日本信用情報サービスの「JCIS WEB DB Ver.3」を提供する販売会社。「JCIS WEB DB」を中核に、新聞記事・警察関連情報・行政処分情報などを網羅したデータベース即時検索ツールを提供。【公共性の高い実績】導入先には、金融、ガス・電力、上場企業などが名を連ね、リスク管理と業務効率化を支援。
URL    :https://j-rmc.co.jp/
本社    :大阪府大阪市中央区城見2丁目2-22 マルイトOBPビル3F 

◆アラームボックス株式会社
代表    :代表取締役 武田浩和
設立    :2016年6月
事業    :日本信用情報サービスの「JCIS WEB DB Ver.3」を提供する販売会社。企業向けのリスクマネジメントサービスや新世代の調査事業を展開。【取引の安全性と業務負荷の低減】主力サービス「アラームボックス パワーサーチ」は、新規取引先の風評、反社チェック、支払履歴などをひとまとめに調べる。
URL    :https://alarmbox.jp  https://alarmbox.jp/powersearch
本社    :東京都新宿区市谷本村町3-22 ナカバビル8F

 

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